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キッズドア心理チームコラム vol.16 理由がなくともつらいと言ってもよい

キッズドア心理チームコラム vol.16 理由がなくともつらいと言ってもよい

「つらい」と言いにくい世の中

つらい出来事があったわけでもないのに、気分が落ち込んでしまうことはありませんか?そんなあなたの様子を見た誰かが心配して「どうしたの?何かあったの?」と声をかけてくれたとしても、「いや、何でもないよ」と答えることしかできず、心の中のつらい気持ちを伝えることはできぬまま。

私たちは言葉を使い、つらい出来事や感情などを他の誰かに伝えて、一緒に感じてもらったり、考えたりすることができます。一方で、大人になるにつれ、自分の気持ちを話すときでさえ、相手にわかりやすく語ることが求められるようになっていると感じることがあります。

「どうしたの?何かあったの?」という問いに対し、私たちは無意識の内に相手にわかるような言葉で説明しなければいけないと考えますし、「言葉にできない」と思えば、「何でもないよ」と相手にも自分に対してもごまかしを使うことがあります。

私たちの社会には、言葉で説明して理解されるようなことでしか私たちは「つらい」と感じてはいけないという暗黙のルールがあるように思われます。では、私たちの日々の生活の中で体験する苦しみは、全て言葉にできるものでしょうか。そうではないと心理学研究は述べています。

ストレス研究から見た傷つき

ストレス研究では、ストレス体験は、大きく2つに分けられるとされています。一つはライフイベントと呼ばれ、例えば、受験、就職、引っ越し、お別れなどの大きな出来事です。これらは、私たちの生活を大きく変える出来事のため、私たちは、「引っ越してから生活が変わって、しんどい」など言葉にすることが多いかもしれません。わかりやすく、つらい気持ちの原因を言葉にできるためです。

もう一つがデイリーハッスル(daily hassles)と呼ばれるものです。これは、日々の生活の中で私たちが体験する、小さなストレス体験のことを指します。道ですれ違った人の疲れ果てた表情を見ると、私たちは無意識下で、その人の疲れた表情から感じ取ってしまうことがあります。でも、「さっきすれ違った人の疲れ果てた表情を見て、とてもしんどくなったんだ」とは、人に言いづらいですね。だから、私たちは、道行く誰かの表情から何かを感じ取りつつも、何事もなかったかのように日々の生活を送ります。こうした見えない小さな傷つきは、誰にも共有されずに私たちの中で日々蓄積していくものです。

理由がわからないつらさの、もう一つの入口

私たちの気分が落ち込むとき、日々の出来事からのみに、影響を受けているわけではありません。私たちは生まれてから今まで多くの経験をしてきました。それらは、今、目の前になくとも、記憶の中には残っているものです。そうした記憶たちは、ひっそりと私たちの日々の体験を彩ります。なんとなく気分が落ち込む夕暮れ時には、小さいころの夏休みの終わりを重ねているのかもしれません。それは、言葉にならずとも確かに私たちの今に大きな影響を与えています。

深層心理学者のS.フロイトがいうには、心には二つの層があります。一つは、意識と呼ばれる層で、私たちが言葉にしたりして、伝えることができる感情や体験、記憶のある領域です。もう一つは、無意識と呼ばれる層で、小さい頃の記憶やつらい体験などで満たされた領域です。つらい記憶というのは、常日頃から思い出していると、日常生活を送るのが難しくなるため、忘れ去られたかのように私たちの“意識から無意識へ”と押し込まれていきます。理由がわからないけど、漠然とつらいとき、無意識下の記憶と今を重ねているのかもしれません。

「つらい」を言葉にするときのコツ

以上のような理由などから、私たちは「つらい」とは簡単に言いづらい世の中を生きています。でも、「つらい」と言えないと日々の生活は中々しんどいものとなってしまいます。なので、少しでも「つらい」といいやすくなるためにできることを一緒に探していきましょう。
まず、大切なのは「原因を説明」よりも、「いまの状態が伝わること」です。つらさには、明確な形がない時もあります。だから、説明が気持ちに追いつかない日があっても不思議ではありません。そんなときは、理由探しをいったん脇に置いて、「いま、どんな感じか」に意識を向けることが大切です。

たとえば、次のように言葉にできるかもしれません。

  • 「理由はうまく言えないのだけれど、胸が重い」
  • 「今日は笑えそうな気分じゃない」
  • 「考えがまとまらないけど、つらいんだ」

こうした一言でも、今の状態は相手の中で想像されやすく、伝わりやすくなります。


次に、安心感につながりやすいのは、「どう聞いてほしいか」を先に伝えることです。アドバイスが、心の準備がないとしんどいものになるときがあります。だからこそ、聞き方のお願いを添えると、会話の中に安心感が生まれます。

「アドバイスより、今は聞いてもらえると助かるんだけど、、」

こうした一言は、相手の負担も減らします。どんな風に聞いたらいいか明確になるからです。


また、事前に、気持ちを伝えるためのフレーズを作っておくのも一つです。いざというときは頭が回りにくいものなので、用意があると、少し安心につながります。

【切り出し方】

  • 「いま少し話してもいい?」
  • 「うまく説明できないんだけど、今ちょっとしんどくて」

【状態を言葉にする】

  • 「胸が詰まる感じがする」
  • 「エネルギーが残り少ない感じ」
  • 「気持ちが落ち着かない」

【どう聞いてほしいか言葉にする】

  • 「アドバイスはいらなくて、聞いてほしい」
  • 「聞いてくれるだけで安心するのだけれど」

【時間で区切る】

  • 「5分だけ」
  • 「10分だけ」

これらをつなげてみると、短いフレーズになります。

たとえば、「うまく説明できないんだけど、今しんどくて、気持ちが落ち着かない。5分だけ、聞いてもらうだけでいいのだけれど」といった一文になります。こうした一言で、つらい気持ちを誰かに伝えやすくなります。

最後に、つらい気持ちというのは、理由があるなしで、正しいとか間違っているとかが決まるわけではなく、言葉にならない日があっても、弱さということではありません。つらさやしんどさを抱えている人が少しでも自分に優しくなれたらよいと思います。

お読みいただきありがとうございました。

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